大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和53年(ネ)436号 判決 1980年10月29日

控訴人

池田智児

右訴訟代理人

増田淳久

被控訴人

株式会社

スズケン

右代表者

別所芳樹

右訴訟代理人

田畑佑晃

外二名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一被控訴人が本件手形を振出したことは当事者間に争いがない。

二被控訴人は、控訴人が本件手形の所持人であることを争うので、先ずこの点について判断する。

<証拠>によると、控訴人の夫である訴外池田昌叶こと鄭光珍(以下昌叶という)は昭和四九年六月頃から金融業を営んでいたものであるが、昭和五一年六月頃、本件手形の第四裏書人である村野井清から白地裏書による右手形の譲渡を受け、その所持人となつたこと、その当時、昌叶は銀行取引停止処分を受けていたため、控訴人名義或いは青木某という架空人名義の銀行預金口座を使用していたが、控訴人は家事に専従し、夫の金融業には全く関与せず、本件手形の譲受けにも関与しなかつたこと、そのような事情の下で、本件手形に控訴人名義で大和信用組合に対してなされた取立委任裏書は昌叶が控訴人に無断で同人の名義を使用してなしたものであつて、右組合から本件手形の返還を受けた者も昌叶であつたことが認められる。

そうすると、控訴人は自らもしくは昌叶を代理人として村野井清から本件手形を取得したことも、昌叶からこれを取得したこともなく、本件手形の所持人は昌叶であると認めるべきであり、この事実は控訴人及び昌叶の原審におけるその旨の供述からしても明らかであるといわねばならない。当審証人池田昌叶の証言中、右認定に反する部分は信用できず、ほかに右認定を左右するに足りる証拠はない。そして昌叶及び控訴人の原審における右供述時点以後に控訴人が本件手形を取得したことについては何ら主張立証がないから、結局、控訴人は本件手形の所持人ではないといわざるをえない。

三そうすると、控訴人の本訴請求はその余の点について判断するまでもなく失当として棄却すべきであり、これと結論を異にする本件手形判決は取消を免れない。

よつて原判決は相当であるから本件控訴を棄却することとし、民訴法八九条、九五条を適用して主文のとおり判決する。

(秦不二雄 三浦伊佐雄 高橋爽一郎)

目録<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例